カテゴリ: 珍しい頭痛

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本日は、慶応大学から出た新型コロナワクチンと頭痛に関連した論文についてご紹介いたします。

雑誌:
Cephalalgia 2021/8/19 on-line 

著者:滝沢翼先生(慶応大学)

タイトル:Incidence of headache after COVID-19 vaccination in patients with history of headache: a cross-sectional study
慢性頭痛患者における COVID-19 ワクチン接種後の頭痛の発生率) 

 慶應大学病院の看護系職員について、健常者、片頭痛を有する者、それ以外の頭痛を有する者の
3つのグループに分類し、ワクチン接種後に生じる頭痛の頻度特徴について調査しています。
(調査数
171名・女性94%・年齢の中央値は31歳)

 調査によりますと、普段から片頭痛、片頭痛以外の頭痛がある場合、健常者と比較しワクチン接種後に
頭痛が生じやすいことが明らかになりました。
(健常者
37.9%片頭痛 69.2%片頭痛以外の頭痛 71.4%

 また、
2回目の接種時の方が 1回目の接種時よりも頭痛が生じやすいこともわかりました。
1回目20.5%2回目45.6%

 ワクチン接種後に頭痛が発症するまでの時間の中央値は、
1回目10時間後、2回目12時間後で、頭痛の持続時間の中央値は1回目では4.5時間、2回目では8時間だったとされています。

結論:
普段から頭痛をもっている方は、そうでない方と比較してワクチン接種後に頭痛が生じやすい可能性があるため、接種の際には注意が必要と考えられます。

  私の外来にこられる患者さんでも同様の傾向があります。

  ですので接種後についてですが
①頭痛だけあって、発熱はみられない。
  → 通常の片頭痛の薬のみ内服して下さい。

②発熱も頭痛もみられる。
  → 通常の片頭痛の薬+解熱鎮痛剤(カロナール・ロキソニンetc.)で内服して下さい。

  と普段から説明しております。これで概ね2-3日で症状は軽快するのが一般的ですが、中にはずるずる頭痛を引っ張る患者さんもいらっしゃいますので、注意が必要です。

池田脳神経外科 092-589-0150
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マスク頭痛

 本日は患者さんからよく言われる「マスク頭痛」についてです。

 新型コロナ感染症で、自宅から出て行く際には「マスク」着用しないと行けない環境が半年以上続いています。恐らく、この状況はずっと続き、来年の今頃になっても同じような話しをしている可能性はあります。

 もちろん、新型コロナ感染症が収束して、マスクがいらない社会に戻ることが何より大事な事なんですが、実際問題まだその行方は不透明です。

 ではどういう点が「マスク頭痛」をひきおこしているのでしょうか?

 ①マスクをつける事への圧迫感
 マスクをつけることで、耳・鼻・口・顎などをtightに覆うことになりますので、どうしても着けている感覚が常時あり、常に圧を感じてしまう。ストレスになるなどが悪影響を及ぼしていると考えます。

 ②大気より少し酸素濃度の少なく、二酸化炭素濃度の濃い空気を取り込む
 このことがひいては脳血管の拡張をもたらし、片頭痛をおこす誘因になりかねないということです。またこの時期は直射日光の強さ、屋内と屋外の寒暖差などもあいまって頭痛をひきおこしやすい危険性があふれています。

 では、このような状況で「マスク頭痛」をおこさないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?

 ①マスクの長時間はめっぱなしを防ぐ
 まず、これにつきます。屋外で人が少なければマスクをはめる必要性はありませんし、屋内でも周囲に人がいなければ、どうぞ十分確認の上外しましょう~!

 ②努めて深呼吸しましょう~!
 働く環境、学生さんであれば授業中などでマスクをはずせないかんきょうであれば、定期的に深呼吸をするのをお勧めします。気持ちもre-freshされますし、酸素濃度も上がりますので、いい方法だと思われます。

 ③はめやすいマスクを選びましょう
 マスクをつけている違和感をなるべく感じないマスクを選ぶことも非常に大切です。我々医療者は布マスクというわけにはいきませんが、医療関係以外ではcool感を謳っているマスクや、fit感を謳っているマスクなど多彩な種類があります。
 自分がなるべくマスクをつけているのを忘れるようなマスク選びは大事なpointと思われます。


アルコール頭痛

本日は「お酒」と「片頭痛」についての関連性についての報告です。
外来でも「お酒」と「片頭痛」の関係性については聞かれます。

私自身は必ず「お酒」が悪影響を及ぼすとも思っていなくて、「片頭痛」をおこしやすい環境で「お酒」をのむことで「片頭痛」が引きおこされると思っていたので、同じような結果でしたので納得した論文と言えます。

「お酒」がストレス軽減に繋がり、「片頭痛」をおこしにくい要素もありますので、十分上手な「お酒」との付き合い方を学んで欲しいです。

著 者:
G. L. J. Onderwater

所 属:Leiden University Medical CenterNetherlands

雑 誌:European journal of neurology264,2019585-595

まとめ:アルコールが片頭痛を確実に引き起こすかどうか及びその理由はよく分かっていない。
しかし、片頭痛患者の多くはアルコールが重度の頭痛を引き起こす可能性があると述べ、アルコールを避けていることが調査により判明した。


片頭痛患者はアルコール摂取を片頭痛発作の引き金として関連付けることが多いが、患者の報告によると、アルコールを摂取しても常に発作が引き起こされるわけではない。

本調査の参加者の約36%が発作の引き金としてアルコール摂取を挙げた。これらの患者の3分の1は(アルコール摂取の)3時間以内に片頭痛を発症し、ほぼ90%の患者は10時間以内に片頭痛を発症した。患者の見積もりによると、約2杯のアルコールで発作を発症した。

それでも、赤ワインが引き金となったと述べた人のうち、赤ワインを摂取するたびに頭痛が引き起こされた、と述べた人は9%のみであった。
ウォッカが引き金となったと述べた人のうち、飲酒のたびに頭痛が引き起こされたと述べた人は11%のみであった。

この結果より、アルコールは片頭痛を起こしやすい人の約3分の1に影響を及ぼすと思われ、頭痛を引き起こすアルコール量及び頭痛を引き起こすのにかかる時間もさまざまであると著者らは述べている。

その原因としては、アルコール摂取だけが危険因子というわけではないが、ある片頭痛をおこしやすい状況(月経、ストレス、熱、特定の食物、絶食又は睡眠不足など)でアルコールを摂取することで引き起こさせる可能性がある。

リラックスした良い状態で好きなワインを味わう時より、引き金となる他の要因が組み合わさった場合に発作の可能性は高まると考える。


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本日は新しい論文からの御報告です。

稀な疾患ですが遺伝性の疾患でCADASILという疾患があります。
正式には「
皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症」と呼ばれます。
片頭痛発作を繰り返し、更には若年性の認知症(脳血管性認知症)を来す疾患としても知られています。
この疾患に対して片頭痛の予防薬で知られている「ミグシス」を使うことで、脳梗塞の発症が減り、予後が改善したという報告で、大変貴重ないい報告です。

雑誌:Clinical Neuropharmacology2020/7/17

発表者:水野敏樹教授(京都府立医科大学脳神経内科学)

要約:脳卒中再発予防に効果的な薬剤がなかった遺伝性脳小血管病CADASILに対して、
片頭痛予防薬である塩酸ロメリジ(商品名:ミグシス・Ca拮抗剤・片頭痛予防料の目的に使用)脳梗塞再発予防に効果があることを世界で初めて報告した。

(背景)
指定難病CADASILは常染色体優性遺伝形式を示し、若年期からCTMRIで同定される大脳白質病変が徐々に進行。4060歳の中年期から脳卒中危険因子がなくても皮質下白質にラクナ梗塞を繰り返し発症し、うつ症状、脳血管性認知症に至る遺伝性脳小血管病。
NOTCH3遺伝子に変異を認め、病理学的に脳小血管の平滑筋の変性と、電顕でオスミウムに濃染する顆粒(GOM)の蓄積を特徴とし、遺伝子診断または病理診断で確定診断を行う。
同疾患の有病率は10万人あたり1.23.6人とされ、患者数が極めて少ない稀少疾患であり、根本的な治療法が確立していない。
脳梗塞の予防には通常抗血小板薬が使用されるが、CADASILの場合、これらの薬剤では脳梗塞発症予防が難しく、脳梗塞予防に有効な薬剤が望まれている。

(方法)CADASIL患者30人に対して抗血小板剤+
塩酸ロメリジン5mg12錠を2年間服用した。塩酸ロメリジンは片頭痛予防薬として市販されている薬剤であり、脳血流増加作用があり、脳虚血下の動物実験では脳保護作用が知られている。今回の研究では、CADASILと診断された30人の患者を対象に、抗血小板剤に加えて塩酸ロメリジン5mg12錠を2年間服用してもらった。

(結果)1年間の
脳梗塞平均回数は投与前の0.53回と比べ、投与後は0.18回と減少し、脳梗塞の発症が3分の1に減少した。その間、低血圧ほてり、眠気のため3人が継続して服用できなくなったが、これらの副作用は塩酸ロメリジンですでに報告されており、中止後速やかに改善した。

(考察)CADASILは、
脳梗塞の再発を繰り返すことで症状が増悪するため、抗血小板剤に加えて塩酸ロメリジンを服用することで脳梗塞を予防することができれば、患者の予後改善が期待される。塩酸ロメリジン1990年に認可され、広く片頭痛患者に投与されている安全性・忍容性の高い薬剤であり、CADASIL患者に対しても安全に投薬できることが期待されると研究グループは述べている。


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10/8(日)は熊本でheadache master school in Kumamotoが開かれました。

この会は1年に2回日本の東西で行われている研修会で、頭痛専門医をこれから受験される先生方を対象に行われています。

その前座として10/7(土)に脳脊髄液減少症と起立性調節障害の研究会が同じ熊本で行われました。
土曜日の診療をバタバタと終えて、急ぎ新幹線に乗って参加して参りました。

熊本は昨年の大きな地震から1年以上経過していますが、連休だったこと、天候に恵まれたこと、お城祭りと天候で順延された秋の例大祭も併せて行われていたために人の数が半端でなく、めちゃくちゃ活気がありました。

さて今回の研究会の大きな二つのテーマである
脳脊髄液減少症と 起立性調節障害 についてです。

まず脳脊髄液減少症については、少し過剰に診断をつけたり、過剰に治療を行ったりという時期はありましたが、概ね診断・治療ともに落ち着いた印象です。

今回は脳脊髄液減少症のバイオマーカーといって、症状の経過で増減するマーカーがみつかり、その研究の途中経過が福島県立医大の生化学の先生からあり大変興味深かったです。

このマーカーを脳脊髄液減少症や逆の病態でもある正常圧水頭症などで治療前後を追っかけていくと、マーカーが上下していて、診断の的確性・治療効果を見る上で大変有用なようです。

症状については、やはり寝ていると調子が悪くないが、起きて10-15分程度で症状が悪化していくというポイントが、この疾患を疑う一番大事なポイントです。

この症状や経過で引っかけて、更にMRIやRIシステルノグラフィーなどの診断、そして生食パッチやブラッドパッチにつなげるという今までの治療が有用であるようでした。

脳脊髄液減少症は今でこそ名前が随分知られてきていますが、わからなかった時は診断も治療もできず困った疾患でした。
この疾患概念が1991年に発表された概念ですので、まだまだ新しい病気だと言っていいものです。

長くなりましたので、次回起立性調節障害についてお届けします。

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