2016年11月


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今日は再び最新の研究報告からです。
頭痛学会総会でも小児の片頭痛についてお届けしたのですが、今回も小児の片頭痛に対する成人の片頭痛予防薬についての報告です。
タイトル:Trial of Amitriptyline, Topiramate, and Placebo for Pediatric Migraine.
雑 誌:N Engl J Med. 2016 Oct 27.
著 者:Cincinnati Children's Hospital Medical Center Dr. Scott W. Powers

片頭痛を有する小児および思春期の若者に対するトリプタノールまたはトピナの24週間投与は、プラセボに比べて頭痛および頭痛関連障害の予防効果を示せず、むしろ有害事象が増加したという報告です。

 小児・思春期の片頭痛は頻度が高く、アメリカの患者は600万人にといわれている。
その多くは成人期も持続し、社会経済および個人の日常生活への負担が大きい。しかし、米食品医薬品局(FDA)によって承認された12歳未満の小児用の片頭痛予防薬はない。

 この試験では、片頭痛を有する8~17歳の小児・思春期の患者を成人で片頭痛予防効果が示されている2剤〔抗うつ薬トリプタノール(1日1mg/kg)と抗てんかん薬トピナ(1日2 mg/kg)〕を投与する群、またはプラセボ群のいずれかに2:2:1の比率でランダムに割り付けた。 
 主要評価項目は24週間の試験期間のベースラインから28日間と最後の28日間での頭痛日数の50%以上の相対的減少。副次評価項目は頭痛関連障害、頭痛日数、24週間の試験完遂率および治療中の重大有害事象とした。

 結果として予防効果はトリプタノール群・トピナ群・プラセボ(偽薬)群3群間に有意差はなかった。

 有害事象は、全体で計272例852件(アミトリプチリン群301件、トピラマート群419件、プラセボ群132件)報告された。
 プラセボ群よりも有意に実薬群では有害事象が増加していたために、試験は途中で中断されています。
 
 この結果をうけてDr.Powersらは「試験の対象は8~17歳で、反復性および慢性片頭痛が含まれているが、今回の結果から小児用の片頭痛予防薬について再検討される可能性が示唆された」と述べている。

 日本では小児片頭痛の予防薬としては、一般的にはペリアクチン・デパケン・ミグシスなどが使われることが多く、トリプタノールやトピナはあまり使われていない印象です。(全国データがないので詳細はっきりしませんが)
 しかし、2剤の効果がなかったことは非常に残念な結果です。
 
 選択肢は多ければ多いほどありがたいわけですので、これからの小児片頭痛の予防薬を考える上で大変意味のある論文と考えています。、


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3回にわたって日本頭痛学会総会の話をしました。
今回は研究論文からのお話です。

雑誌:「Headache: The Journal of Head and Face Pain」(2016/9/27)

著者:Dr.Vincent Martin(シンシナティ大学・アメリカ)

内容:甲状腺機能低下症は体内で十分な量の甲状腺ホルモンを産生できないために、気分の変動・体重増加・脱毛・倦怠感・便秘・月経周期の乱れを引き起こすことがある。アメリカでは片頭痛は人口の約12%、甲状腺機能低下症は約2%の人にみられ、命にかかわることはまれだが、適切な治療を受けなければ生活の質が低下する可能性がある。

 今回の研究はボランティア8,400人を対象として20年間追跡した。群発頭痛や緊張性頭痛など、既存の頭痛疾患のある患者では甲状腺機能低下症リスクが21%高く、特に片頭痛患者では41%高かった。

 この結果は、片頭痛患者は特に甲状腺機能低下症に罹りやすいことを示唆している。ただし、この研究は一方の疾患が他方の疾患を引き起こすことを証明するものではなく、頭痛と甲状腺機能低下症がどのように関連するのかは明らかでない。過去の研究では、甲状腺機能低下症を治療することで頭痛の頻度が減少することが示されており、そのため頭痛患者が甲状腺機能低下症を発症すると頭痛の頻度がさらに増える可能性がある。
 医師は頭痛患者に対して甲状腺機能低下症の検査を行うよう注意する必要があると述べている。

 実は京都での日本頭痛学会総会でも「小児の片頭痛」のコーナーで筑波学園病院小児科の藤田先生が全く同じ話をされていた。小児においては初診時に一般採血を行うべきで、その際には甲状腺機能を加えてcheckすべきだという話でした。
 確かに貧血傾向の児童は、貧血を是正することで片頭痛の程度が軽減することを経験しています。今までは甲状腺機能を頭痛患者さんで積極的に調べてこなかったので、この論文といい、頭痛学会総会での藤田先生の話といい、大変参考になり実践していきたいと思っています。


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今回が第44回日本頭痛学会の3回目です。
小児の片頭痛についても重点を置いて聞いてきました。

小児の頭痛の第一人者といえば筑波学園病院小児科の藤田光江先生です。
この先生の活動は幅広く、患者・患者かぞくだけでなく、保健室の養護教諭にまで向けられています。

日本頭痛協会のホームページ(http://www.zutsuu-kyoukai.jp/)には
「養護教諭と教師向け資料」 知っておきたい学童・生徒の頭痛の知識というものをupされています。

私個人的には高校生以上はほぼほぼ大人と同じように治療していきますがあ、やはり小学生・中学生ではそればかりではうまくいきません。

理由としては、
①心身ともに不安定な思春期で自分の状態をきちんと把握できないことが多い。
②頭痛以外の要因(学校・親・部活動・塾etc.)が関与することも多い。
③体・心の状況も少しずつ変わっていく
④薬の効果も出にくい
・・・・などです。

特に起立性調節障害(OD)や不登校なども絡み合うと余計に大変ですし、本人だけでなく、親との関連性も多く比重をかけないといけないからです。

ですからタイトルのように秘策はないようです。
また、不安症候群・身体症状が中心にでるメンタルな問題からくる頭痛は寝込むような頭痛でも亡ければ、鎮痛剤は効果が無いといわれていて、厄介なものです。

薬物療法だけでなく、非薬物療法も考慮され、多面的な原因・治療が必要でかつ長い目で経過をおうことも大切で一朝一夕に結果を求められないことも、難渋するところのようです。


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京都での頭痛学会総会の2回目である。
学会は4会場で行われたために、聞きたい演題が同時間帯にあってることも多く、聞きたい話が全部聞けないのが難点です。

興味を持った演題として
鹿児島県鹿屋市の田村脳神経外科クリニックの先生の演題です。
「片頭痛は寛解できるか」という演題です。

以前、この先生の取り組みは少し聞いたことがありましたので、事前にcheckしていた演題です。

どのような話かというと
基本的に一定の期間もしくは一定の年齢まで片頭痛が続いている患者さんは片頭痛自身が治ることはなく、上手につきあうことを考えないといけないという考え方が世の中の趨勢であり、私自身もそのように患者さんには話しています。

この先生は、既存の予防薬を適切に調節しながら再発率を低減させるという研究を発表されたのです。

通常、片頭痛の予防薬は単剤で使うのが一般的なのですが、複数の予防薬(デパケン・インデラル・ミグシスetc.)を、一般的な使用量より多く使って、また一般的にはある程度予防薬を使って片頭痛発作が減れば、予防薬は減量・中止するのですが、この先生は中止せずに予防薬を継続して使っていく。それで片頭痛の発作回数が極端に減って、予防薬を中止しても片頭痛はあまりおこりませんよという演題でした。

片頭痛発作が極端に減り、トリプタンの使用が減り、予防薬は金額的にも安いので長く使って片頭痛自身がなくなるか極端に
減少するのであれば、大変いい方法ではないかということです。

もちろん、現在の日本を含め世界の頭痛診療の趨勢からは大きく異なる意見だけに多数の質問がでて、エキサイトした発表になりました。いずれの質問もそのような治療を行った理論的背景が何かを問われることが多いように思います。

この先生は決してお話が上手な先生ではないので、立て板に水と返されないので余計に議論が沸騰していきました。

どのような世界でも一般的な常識から離れる意見はどうしてもこのような傾向にあります。

私自身はあまり納得いく意見ではありませんが、ごもっともなご指摘がありましたので、思いつきでない理論的背景をきちんと明らかにされて、症例を増やして発表されると、今まで私たちがやってきた頭痛診療が大きく変わっていくかもしれません。またこの先生の発表に注目していきたいと思っています。

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