2011年09月

今日は久しぶりに最新の研究報告です。
 
雑誌:BMJ誌2011年9月10日号
 
筆者:NIHのKathleen R Merikangas
 
対象:
スイス・チューリッヒ州の住民で、1978年に男性19歳(徴兵義務で登録)、女性20歳(選挙名簿に登録)であった4,547例を対象。
対象を30年間追跡し、その間に行われた7回のインタビューに回答した591例について、頭痛の有病率、頭痛タイプ別割合の時間的変遷、発症年齢、重症度、影響、家族歴、医療サービスの利用、薬の服用について評価が行われた。
 
結果:
各頭痛タイプの年間平均有病率は、
前兆のある片頭痛が0.9%[女/男比:2.8(女1.4%、男0.5%)]
前兆のない片頭痛が10.9%[女/男比2.2(15.1%、6.8%)]
緊張型頭痛が11.5%[女/男比1.2(12.5%、10.4%)]であった。

各頭痛タイプの30年間の累積有病率は、
前兆のある片頭痛3.0%、前兆のない片頭痛36.0%、緊張型頭痛29.3%であった。
 
 タイプ別にみた頭痛症候群と長期転帰との関連について調べるため、一般住民を長期追跡した結果、各頭痛タイプが重複して発生していることが明らかになった。
 国際研究の多くが、片頭痛の高い有病率と重大な機能障害との関連について報告しているが、Merikangas氏は「本研究は、頭痛持ちの人を前向きに追跡することは重要であることを際立たせるものとなった」と述べるとともに「一般住民における頭痛の本質は、タイプ別差異に基づく頭痛の診断名適用では正確には捉えられないだろう」と結論している。
 しかし前兆のない片頭痛の有病率は高率にもかかわらず、大半の人が一過性で、追跡期間の半分以上の期間中、片頭痛を有していたのは約20%に過ぎなかった。
 また、片頭痛を有した人のうち、その後は片頭痛を伴わずに緊張型頭痛を発症した人の割合は約19%であった。緊張型頭痛を有した人で、その後は緊張型頭痛を伴わずに片頭痛を発症した人の割合は約22%であった。
これらの各頭痛タイプの重複がかなりあることや非特異的な進行パターンにより、優勢的な頭痛タイプの安定性はきわめて低かった。
 
 片頭痛がずっと続くということでもなく、緊張型頭痛をおこしたり、いろいろなんだなあと感じた次第でした。
 
 

 昨日から大阪に頭痛の研究会で来ています。ホテルの窓からはUSJや観覧車が眺められます。
 
 そこで1つおもしろい話を聞いてきました。
 以前から東京女子医大の清水先生が片頭痛患者さんは天気を予知する能力があるという話しをされています。その清水先生が、ブログ検索をしたところ、いわゆる東北の大震災の前日である3/10には頭痛のネタがブログの中で極端に増加していることを話されていました。
 
 ブログのテーマを検索された結果、3/9の数十倍もテーマとして取り上げられていたようです。
 
 卑弥呼も片頭痛もちで、予知能力のある神秘的な女性で徐々に力を蓄えていき、権力の座を手に入れたといわれていますので、その話しも真実性が高い話です。
 
 天気だけでなく、天変地異も何か予知してしまう片頭痛患者さん。奥が深いですね~。
 
 先週は、台風12・15号の2つの台風が日本に上陸したわけですが、片頭痛患者さんは頭痛が頻発しているようで、先週の外来はこの話で持ちきりでした。
 ですから天気x片頭痛 切っても切れない仲のようです。

 最近、60歳以降の薬物乱用頭痛の患者さんが多く見えます。
 
 特徴的な傾向として
 ①遠くからおいでになる。(私の診療圏のはるか遠くから)
 ②多数の医療機関を受診されての来院。
 ③多数の検査をされて異常所見なし
 ④今までに多数の鎮痛剤を服用されている
 ⑤ホームページをcheckされて来院される
 ⑥再診率が高い
 ⑦治るのに時間がかかる
 ⑧真面目な患者さんが多い
 
 思いつくまま出してみました。
 恐らくこのように共通したものがあります。
 
 薬物乱用頭痛は禁煙治療に似たところが多くあります。
 ①患者さんはこのままではいけないと思っている。
 ②止めれれば止めたいと思っている。
 ③内服する期間(喫煙している期間)が短いほうが治療しやすい。
 ④1日の内服量(1日の喫煙本数)が少ないほうが治療しやすい。
 ⑤徐々にやめるか一気に止めるかという方法がある。
 
 なるほどと思っていただける方も多いと思います。
 だけれど一筋縄ではいかないのも事実です。

 昨日診療を終えて、ある製薬会社の社内勉強会に呼ばれて話をしてきました。
 
 最近、てんかん薬で非常に有名な「デパケン」という薬が片頭痛の予防療法の適応が取れました。
 実は20年以上前からアメリカなどでは片頭痛の予防薬として実績をあげてきました。日本でも頭痛専門医であれば一般的に使用してきたわけですが、保険適応がとれないために、なかなか表だって使えない状況でした。
 
 それが急に厚生労働省が認可してくれたために、トントン拍子に使えるようになったわけです。
 
 使う我々にとってはなじみの薬であり、使用実績もたくさんあって、改めてという印象はないのですが、売っている製薬会社にとっては経験がまったくないために、どうやってプロモーションしていこうかという話で、その橋渡し的な役割で話をしてきました。
 
 デパケンという薬は日本で売り出されて30年ちかくたっていますので、何も薬の効き方・副作用などをteachingする必要はないわけですが、どのような使い方をしてどうやって効果をあげるかという話をしてきたわけです。
 
 10人くらいの人が聞いていただいたのですが、最後まで熱心に聞いていただきましたし、ちゃっかりこのブログについても宣伝しておきました。

↑このページのトップヘ