2009年10月

 当院にいらっしゃる頭痛の患者さんの3割は薬物乱用頭痛です。

 最近、私が患者さんに説明しているのは
 「なぜあなたの頭痛は鎮痛薬が効かなくなったのかわかりますか~?」とまず聞きます。

 「わかりません」とか「薬の飲み過ぎだからでしょう~」と答えます。

 もちろん それはそれでいいんですけど最近はこのように答えています。

 「あなたが鎮痛剤を内服しすぎて、もうこれ以上あなたの身体が薬を飲まないでと悲鳴をあげてるんですよ!」

 「薬を飲んで効果があれば、どんどん薬を飲むでしょう。そして、知らないうちにドンドン体が悪くなっていくんですよ。そうならないうちに薬をやめて欲しいと体が叫んでいるんですよ~!」

 「それでも まだ薬をのみますか?」

 「今の状況に目を背けず、自分自身を見つめてください」

 「そして、これでいけないと思ったら逃げずに薬を断ちましょう~!」

 「今逃げても、決して状況は回復しません。もっと悪化するだけです。絶対逃げてはダメですよ。逃げて困るのはあなたです。ですから決して逃げないで自分自身を見つめてください。」


 このような話をします。
 流涙する人もいます。
 また熱すぎると煙たがられる人もいます。
 でも、これが真実なのです。
 ですから切々と訴えています。

 慢性頭痛でゞ枋シ親痛 ∧卞痛 7家頭痛を頭痛三兄弟と私は呼んでいます。

 その中で一番頻度の多い緊張型頭痛と二番に多い片頭痛はその症状は対比して説明されています。

 例えば頭痛のおこりかたは?
  片頭痛はズキンズキンと拍動性の頭痛であるのに対して
  緊張型頭痛は拍動性の頭痛ではないのが特徴です。

 頭痛の際に
  片頭痛は冷やしたほうがいいのに対して
  緊張型頭痛ではあっためるのが基本です。

 吐き気・嘔吐については
  片頭痛は嘔吐することが度々あるのに対して
  緊張型頭痛は嘔吐することは決してありません。

 頭痛時の体を動かすと
  片頭痛は頭痛がひどくなるのに対して
  緊張型頭痛は体を動かしていると頭痛が楽になります。

 このように対比的に説明できるのが片頭痛VS緊張型頭痛なのです。
 それ以外にもたくさん対比できるものがあります。

 片頭痛と診断された患者さんの以前の病院での診断の75%は片頭痛以外で、片頭痛と診断されたのはたった25%だという報告もあります。多くはやはり緊張型頭痛と診断されることが多いようです。皆さん間違われていませんか?

 私自身は片頭痛の患者さんで市販の鎮痛剤などで治療することは構いませんと話しています。
 ただし条件があって

 (卞痛の回数が少ない(月に1-2回以下)
 鎮痛剤で痛みがきれいに治る
 F痛以外の症状がない
 などの条件があります。

 片頭痛は「脳の神経細胞の異常な興奮による身体の様々な諸症状」と考えられます。

 ですから主症状は頭痛ですが、
 消化器症状としての
 ‥任気 嘔吐 J部膨満感 げ捨
 めまい・抑うつ気分・全身倦怠感などいろいろ症状が片頭痛の症状として認識されています。

 鎮痛剤は片頭痛の諸症状の中での頭痛にしか効果を発揮しません。
 ですから上記の条件に見合う人では市販薬でもOKなんです。

 しかし、身体の様々な症状がある場合には、やはり片頭痛の薬が必要になると思います。

 片頭痛の薬は痛みだけではなく、その他の身体症状も改善させるからです。

 今までに一度も変頭痛薬を試していなければ是非試して欲しいものです。

 先日のブログにも担当の先生が十分相談にのっていただけないという悩みがありました。

 そこで今日は診療所からみた頭痛患者さんの経済学について書きたいと思います。
 診療費は全国統一ですが、意外とわかりづらい摩訶不思議なブラックボックスのようなものです。

 例えば、当院ではよその診療所を受診されて、画像検査(CT・MRI)、採血、内服処方までされていながら再度受診される患者さんがいらっしゃいます。いろいろ話を聞いて治療方針まで話をすると20分ほどかかります。この場合は
  初診料270点+電子カルテ加算3点=273点
  つまり2730円の診療費で3割負担ですので、患者さんの負担は820円になります。

  再診になりますと123点。つまり1230円で、患者さん負担は370円になります。
  内服を処方された場合には191点。つまり1910円で、患者さん負担は570円になります。

 ところが受診して1ヶ月以上たった再診の生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症など)の患者さんでは28日以上の処方がある場合は481点。つまり4810円で、患者さん負担は1440円になります。

 生活習慣病の場合には、多くは血圧を測定すあり、採血の結果などを話して処方を交付するだけで終わるケースが多く、時間も比較的短く、更にうまみが多い患者さんになります。

 ところが頭痛患者さんの場合には時間が非常に多くかかった上に、いただける点数は少ないので、そういう意味ではうまみが少ないということになります。

 私自身は頭痛を専門に診療していますので、値段ウンヌンは関係なく診療していますが、そうでもいかない医療システム上のカラクリがあるのも事実なんです。

 ここまで書くと診療妨害になると怒られそうですが、そこらあたりも十分話を聴いてもらえない理由の一つかもしれませんね。

 週末を利用して東京であった頭痛の研究会に参加しました。

 この研究会は過去3年ほど毎年参加しています。
 discussion形式で頭痛診療について話し合いができる唯一の研究会であるために私は、土曜日の午後の診療を休止してでも参加しています。

 ところがである。
 基礎的な話から頭痛大学でも有名な間中先生の話と盛り上がったのですが、その後にあったdiscussionが最悪でした。というのも取りまとめをする先生が不手際で全くdiscussionにならないまま、意見交換できないままで終わってしまいました。

 tensionがたベリでした。

 もちろん、相当の犠牲を払ってきたわけですから、それなりの明日からの診療に役に立つものを一つでも多くと思って最後まで気合を入れなおして聞いてきました。

 また少しずつ小出しにしていきましたが、最も共感できたのは間中先生から「頭痛診療は患者さんに共感する医学である」という話でした。「患者さんから学び、患者さんに共感して、患者さんに還元する。それが実現できるのが頭痛診療です」という話でした。

 何か哲学的ですが、非常に含蓄のある言葉だなあと思い胸にしまって帰って来ました。

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