ヤブ医者 決してほめ言葉ではなく、非難される言葉です。

 幸い私は今までに面と向かって患者さんから言われた経験は一度もありませんが、心の中でつぶやかれたり私のいないところで罵倒されたことはかなり多いものと思います。

 私の両親は着物を売る仕事をしていますが、常々お医者さんの奥さんには竹の絵柄の着物は売らないと言っておりました。というのは旦那はヤブ医者。奥さんの着物もヤブ柄と言われるからだと申しておりました。今もそうしているといっておりました。

 最近、高名な脳神経外科医が雑誌のあとがきに「ヤブ医者を目指す」というもの珍しいタイトルの文章がありました。非常に興味深い内容でしたので皆さんにもご紹介いたします。

 「ヤブ医者」が実は名医、良医の意味であることをご存知でしょうか?
どうしても一般的解釈として「ヤブ医者」が下手な医者、いい加減な医者の代名詞になってしまったかはわかりませんが、本来は「ヤブ医者」とは自らの診療外の時間に籠を背負い、「藪」の中に入って薬草を摘み、さらにそれらを薬剤にし、患者の症状にあわせ調合していた医師を示す一種の称号だったようです。現在のように医療が複雑になり、さらに専門分野化している状況ではこのような「ヤブ医者」の存在は不可能ですが、せめて個々の患者さんに見合った治療を行うことは医師として心にとめておくことは大切なことではないでしょうかという文章でした。

 私は「ヤブ医者」とはヤブの中に入ると周りの状況がよくわからなくなるために、患者さんに対しても状況のよくわからないまま治療してしまう下手な医者というように解釈していましたが、本来は個々の患者さんに応じて薬を調合する立派な医者という意味だったようです。

 「ヤブ医者」っていい響きの言葉なんだと改めて感じる今日この頃です。

 皆さんはどう思われますか?